小さな会社・個人事業の経営者に伝えたい「7つの提言」3.経営のプロは契約のプロ ①契約とは、契約自由の原則と例外
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小さな会社・個人事業の経営者に伝えたい7つの提言
カリスマ社長の不思議な会議
なぜ「融資は投資」なのか、まずは2つのエピソードをお話しします。私が20年間勤めた事業グループの創業者は一代で全国規模の事業を築いた、時代の寵児とも評されるカリスマ経営者でした。私は入社して数年後、社長室の会議に参加するようになり、そこに並べたられたホワイトボードには事業部門ごとの損益の実績と先のシュミレーションした数字が整然と並んでいます。それを眺めながら、社長のレクチャーが延々と続くのですが、そこには借入金の金利は計上されていますが、なぜか返済の記載はありません。社長の口からも返済の話はいっこうに出てきません。当時の私は会計の知識が乏しかったと思いますが、借金の返済が出てこないのはおかしいね?なぜだろう?借入金は返さなくていいのかな?と同僚と話したものです。今、自分で会社を経営してきた私は、その答えを理解しています。あなたはどうですか、なぜだかわかりますか?
コロナ融資はお守り?
2つ目のエピソード、これも私の実体験です。あなたはコロナ禍をどのように過ごしていましたか?私は、創業から16年目を迎え、前年の2019年には意気揚々とこれまでで最高の売上を達成していました。しかし私の事業はコロナ禍にじわじわと飲みこまれ、別の不運も重なり、破産へ一気に舵を切ることになります。今振り返るとあっという間の3年間です。コロナ禍の波が収まりそうで収まらないを繰り返す中で、私にも救いの手が差し伸べられました。事業の規模や実績に応じた助成金の支給です。これまで頑張ってきた甲斐もあり、いただいた月は赤字でなくなるので助かりました。しかも「助成金」は返済の必要のないお金です。そして金融機関からは前年まで黒字だった私に「お守りに」と、市や県の制度融資を限度額いっぱい借りるよう提案してきます。いわゆるゼロゼロ融資で、返済猶予期間も設けられています。危機感を背にした私は一時多額の現金を手にすることになります。その資金を活用したコロナ禍を泳ぎ将来を見据えた新規事業への模索や、組織の再編などを計画し、もがきましたが、多くの無理もあったのでしょう、有効な事業の再構築は実現できず、マイナスの蛇口を閉めるばかりで結局のところ、お守りはいつしかむすびが解かれ会社を維持するために、シャボン玉のようにあっという間に消えていきました。
「小さな会社・個人事業の経営者に伝えたい7つの提言」は
次回「5.融資は投資と心得よ ②融資は投資、黒字のために」につづく
*この章のお言葉
資本は稼動させるためにあり、何かを成し遂げるために使われなければならない。
ピーター・ドラッカー